ほのやく

現役大学病院薬剤師がお薬や医療に関することについて語っていきます。

今さら聞けないがんのこと

そもそもがんって何なんでしょう?

 

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悪性腫瘍(がん)とはなに?

がんは悪いことだということは、みなさん言うまでもなく分かっていることだと思います。

ではなぜ悪いのか?ということに対してしっかりと答えられる人は少ないのではないでしょうか。というわけで、今回はそもそもがんってなに?ということを説明していきたいと思います。

 

がんについて説明する前に、正常な細胞(要するに普通の細胞のことです)について説明しなければなりません。

そもそも私たちの正常な細胞は、増殖を行い、古くなって使われなくなった細胞は死んでいき、必要となった細胞は新しく生まれ変わっています。例えば、髪の毛は抜けては生えてを繰り返していますよね。

普段生活していると実感がわきませんが、私たちの体の中では細胞が新しく生まれては死んでを繰り返しています。

難しい言葉でいうと、正常細胞は生体機能の恒常性を保つように厳密にコントロールされていて、組織量に見合った細胞量が確保されていれば、そこで増殖は停止するようにプログラムされています。

つまり、普段私たちが生きていく中で正常細胞は生まれては死んでを繰り返してバランスを上手に整えているんですね。

 

しかし、がん細胞はこのコントロール機構を逸脱し、過剰に増殖してしまいます。また、リンパ節を経由して様々な臓器へ転移します。

その他にも、浸潤すること(じゅわっと広がるイメージです)も悪い点です。

例えば、「手術したのにがんが再発した」ってテレビドラマなどで聞くことがありますよね。

あれは、がん細胞っていうのは目に見えないレベルでじゅわっと広がっているため、手術では完全に取りきることができず、目に見えないレベルで残っているのです。

それが再び大きくなってきてしまうのが再発です。再発は防ぐために、手術後に抗がん剤治療を行い、目に見えないレベルのがん細胞をやっつけてしまうこともあります(術後補助化学療法といったりします)。そのあたりについては、また後日記事にしますね。

 

つまり、がん細胞の特徴として、細胞が過剰に増殖すること、浸潤すること、転移をすることが挙げられ、これらががん細胞の悪いところなのです。

 

どのように分類される?

がんは大きく分けて、癌腫、肉腫、その他と分けることができます。

1、癌腫

被膜を越えて近隣の正常細胞に浸潤し、血管やリンパ管を介して遠隔の臓器に転移して増殖するものをがんといいます。がんのうち上皮細胞由来のものを癌腫といい、代表的なものは以下になります。

  • 腺癌胃がん、大腸がん、乳がん、肺がんなど
  • 扁平上皮癌食道がん、子宮頸がんなど
  • 移行上皮癌:膀胱がんなど

2、肉腫

結合組織である筋肉、骨などに起こるがんのことをいいます。

代表的なものとして、骨肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫などが挙げられます。

3、その他

癌腫にも肉腫にも分類されないがんは、その他として分類されます。

代表的なものとして、グリオーマ悪性黒色腫、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫白血病などが挙げられます。

 

なぜがんは発生するのか?

発がんの原因は下記のような様々な要因が重なって起きると考えられています。

  • ウイルス
  • 紫外線・放射線の過剰曝露
  • 環境内発がん物質
  • 食品の構成成分
  • 遺伝的要因

それぞれがどのようながんに関連しているのでしょうか?

ウイルスによるもの

ヒトパピローマウイルスは子宮頸がん、B型・C型肝炎ウイルスは肝細胞がん、ヒトT細胞リンパ腫ウイルスは成人T細胞白血病などと関係があります。

紫外線・放射線の過剰曝露

過度の紫外線曝露は皮膚がんや悪性黒色腫に関与するといわれています。また、放射線の過剰曝露も発がんに関連するといわれています。

環境内発がん物質

たばこは肺がん、膵臓がん、腎臓がん、膀胱がん、食道がんの原因となると言われています。また、アスベストは肺がんの原因となるといわれています。

食品の構成成分

高蛋白、高脂肪食は大腸がん、直腸がんの原因になるといわれています。

遺伝的要因

ダウン症では白血病の発症頻度が高いと言われています。

 

まとめ

がんの悪いところは、過剰に増殖すること、浸潤すること、さまざまな臓器に転移することです。

つまり、がんを倒すための抗がん剤治療の目的は、がん細胞の増殖、浸潤、転移を阻止し、強い細胞増殖能と浸潤、転移能を持つ腫瘍幹細胞に対して致死的作用を及ぼすことです。