抗がん剤治療の種類について
がんの治療にはどのようなものがあるのでしょうか?
がんの治療は3本柱
がんの治療には大きくわけて、手術、放射線、薬物療法の3本柱で行われます。
がんの種類やステージによって治療法は異なり、それぞれの治療を組み合わせたり、薬物療法のみで治療を行ったりします。
私は薬剤師であり、薬物療法が専門ですので薬物療法について説明していきますね。
抗がん剤による薬物療法の役割
抗がん剤治療には以下の3つの種類があります。
進行・再発がんに対する薬物療法
進行・再発がんでは、がんの増殖、転移などを抑制するために、化学療法が必要となります。治癒が期待できない場合には、延命効果、症状緩和を目的に薬物療法を行います。
術後化学療法(adjuvant chemotherapy)
手術治療後に、再発予防を目的として行う化学療法を術後化学療法を行います。乳がん、大腸がんなどでは術後の補助療法としての化学療法が有効であるというエビデンスがあり、術後化学療法を行うことが多いです。
術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy)
手術前に腫瘍を可能な限り縮小させる目的で行う化学療法を術前化学療法を行います。乳がん、食道がん、咽頭がん、肛門がん、膀胱がん、肺がんなどでは術前化学療法が行われるようになりました。
例えば乳がんであれば、術前化学療法と術後化学療法を比較した場合、再発率や生存率に差はありませんでした。しかし術前化学療法を行った場合、乳房温存率の向上が報告されました。つまり、術前と術後の化学療法を比較したときに治療効果は同じだったけれど、乳房温存率は術前化学療法を行った方が向上したため、術前化学療法が推奨されるようになりました。
効果判定について
抗がん剤の効果判定にはCTやX線を用いて病変部位の評価を行います。
一般的には以下のように効果判定を行います。
完全奏功(CR:complete response)
すべての病変の消失。4週間持続で確認。
(とてもいいことです)
部分奏功(PR:partial response)
30%以上の縮小。4週間持続で確認。
(いいことです)
進行(PD:progressive disease)
20%以上の増大。新病変の出現。
(悪いことです。抗がん剤の変更など治療の変更が必要となってきます)
安定(SD:stable disease)
PR及びPD基準に満たないもの。
(PDにならないようにこのまま維持したいです)
全身状態の指標
全身状態を表す際に、PS(Performance status)を用いることが多いです。
PSは、患者さんの状態を客観的に評価するものです。
抗がん剤治療は副作用の観点からPS 0~2までの方に投与されることが多いです。
以下に基準を記載しています。
PSの種類
PS 0:社会活動ができ、制限をうけることなく発病前と同様にふるまえる。
PS 1:肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や作業はできる。例えば軽い家事、事務など。
PS 2:歩行や身の回りのことはできるが、軽労働はできない。日中50%以上起居できる。
PS 3:身の回りのある程度のことはできるが、日中50%以上就床している。
PS 4:身の回りのことはできず、介助が必要。終日就床を必要とする。
つまり、抗がん剤治療を行うには日中の半分以上は起きておける方が対象であり、日中の半分以上寝たきり状態になってしまっている方には、副作用に耐えられない可能性があるため投与できないということです。
まとめ
そして、その中の化学療法には、再発後の延命目的、手術後の再発予防、手術前の腫瘍の縮小の3種類あります。
また、抗がん剤による治療は一般的にPS 0~2までの方しか受けられないため、体力を向上、維持することはがん患者さん にとって大変必要なことです。
抗がん剤治療は副作用の観点から体力が落ちる方も多いですが、そういったときは薬剤師に相談してください。
薬剤師はお薬のプロなので、手助けができると思います。